| *宛名のない手紙* |
| 2月の朝 宛名のない手紙を書いた 水色の便せんいっぱいに 文字が躍っている それぞれに生命があるように 春の神様に書いた手紙 紙飛行機にして空に飛ばしたら 雲の郵便配達人が 届けてくれるだろうか 手紙の文字が 風に吹き飛ばされて 背中に天使の羽根を生やし 蝶や木の葉に形を変えながら 野や山に舞い降りてゆく いつしか春の息吹きが満ち溢れ 色とりどりの絵具が 溶けて流れ始める そんな空想が 熟れた果実のように 心の枝を揺らし 束の間 体の中を 爽やかな風が吹き抜けた 春の神様に書いた 宛名のない手紙 今はまだ 机の中にしまっておこう |