*黒猫*
道端から
一匹の猫が
しなやかな
それでいて悠然とした
身のこなしで歩みでてきた
真っ黒い猫だ
その猫はゆっくりと
肩をいからせながら
まっすぐに前を見つめていたが
ふいに自動車の陰に隠れてしまった
野良猫だろうか
それとも飼い猫が
春の陽気に誘われて
日向ぼっこにでも出てきたのか
姿が見えなくなったあとも
妙に気にかかった

夜、床に入ってから
ふと昼間の猫のことが
頭に思い浮かんだ
今頃どうしているんだろう
どこかの家の縁の下で
丸くなっているのかもしれない
最近は縁の下も少ないから
夜の闇の中に
真っ黒い身体を溶けこませて
眼をらんらんと
光らせているのかもしれない
あの真っ黒い猫・・・・